初代委員長 挨拶


産業技術総合研究所労働組合
初代執行委員長 吉門 洋


2001年4月1日、独立行政法人・産総研の発足と同時に、産総研労働組合は全通産改め全経済労働組合の独立行政法人部会の一つとして発足しました。

人事院体制のもとにあった従来の工業技術院研究機関の組合から、労働組合法の適用を受ける労働組合となりました。労働組合の主たる目的は労働条件の維持改善であり、良い仕事・良い研究のできる条件の獲得、働き甲斐のある処遇の獲得に努めて参ります。

良い研究のできる条件は単純ではありません。

独立行政法人はもともと政府機関のスリム化・効率化のため、企業的経営の導入を名目として発足した制度です。スリム化の裏返しとして競争主義と重点化が進むでしょう。しかし研究活動、特に国立研のそれは一般の企業活動と違って、成果が利潤によって量れませんから、企業経営のセンスで管理されては研究活動に大きな歪みができる恐れがあります。産総研は国がカバーすべききわめて広い研究分野を担っていますが、それが今後「産業技術」の語感によって制約を受けることも懸念されます。

どのような組織でどのような研究を実施するかは管理者が決めること(管理運営事項)とされ、職員・研究者は決められた研究を実施するための労働者という位置づけがされています。私たちに与えられたこの地位こそが研究の発展を阻害しているのです。政策的に研究予算が打ち切られ、後年、なぜこの種の研究がされていないのかと問われることもあります。予算を付けさえすれば、必要な研究者・技術者やそれを支援する職員はどうにでも雇用でき、短期間に成果が上がって当然、のような安易な考え方がどこかにあるように思われます。

良い仕事を、良い研究をできる組織・運営・条件を望む職員の声を集め、管理者にぶつけるのが組合の役割です。それは法律で保障された組合の権利であり、管理者はその声に耳を傾けねばなりません。今こそ私達はこの組合の役割を大切にし、活用すべき時だと思います。そして、管理された競争とふるい分けではなく、みんなで議論して作る民主主義に支えられた研究所の発展を見たいものです。